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遠藤 慧 Kei Endo 個展「MEASURE」

■本展によせて
実測スケッチは、建築空間を体験し、その設計を身体的に会得するために、古くから建築家たちが試みてきた手法である。巻き尺を使って一つひとつの寸法を確かめることは、建築を理解し、寸法感覚を養うのに有効な方法だった。今どきそんなことをする人は少ないが、十数秒もあればスマホで3Dスキャンや大量の高解像度写真が手に入る現代において、その簡単さゆえに、「その場で空間を実感する」という体験はむしろ希薄になっているように思う。
描こうとすることで初めて、実は何も観ていなかったことに気付く。何を主体に描くか、どの構図で描くか、どの縮尺で描くか──すべてを選び取らなければ、一本の線を引き始めることすら難しい。その難しさこそが、空間にじっくり向き合うために残された、数少ない手段の一つだと考えている。
設計者としては、建築、内装、家具といったレイヤーに分けて、別々の図面で考えてしまいがちである(そうする必要がある)。しかし、空間の体験とは、本来、その場で感じられる総体的なものではないか。さらには、そこで食べた食事や、その場に至るまでの道のりさえもが、空間の感じ方を決定付けている。スケッチを通じて私は、これらすべての要素を横断的に記録し、空間の質を捉えることを試みている。
【開催概要】
会 場:ホテル1階 ロビーギャラリー
期 間:2025年7月3日(木)~2025年9月30日(火)
入 場:無料
【プロフィール】
遠藤 慧 Kei Endo
2017年東京藝術⼤学⼤学院美術研究科建築専攻修了。⼀級建築⼠、カラーデザイナー。建築設計事務所RFAを経て、環境⾊彩デザイン事務所クリマ勤務。東京都⽴⼤学⾮常勤講師。デザインのリサーチとして始めた「実測スケッチ」が⼈気を博す。著書に『東京ホテル図鑑 実測⽔彩スケッチ集』(学芸出版社)。講談社の雑誌『with』にて「実測スケッチで嗜む名作建築」、建築メディアBUNGA NETにて「⾼架下建築図鑑」連載中。
◉出版物
『東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集』(学芸出版社、2023年8月出版)
世界観の際立つホテルに泊まって、測って、描いた実測水彩スケッチ集。間取りから、インテリア、アメニティ、フードまで、素材や色、寸法つきでビジュアライズした図鑑。東京・近郊のミニマルホテルからラグジュアリーホテルまで、ホテルという空間の魅力を解剖する。
『MEASURE 遠藤慧 実測水彩ポストカードブック』(学芸出版社、2025年3月出版)
これまで様々な事物を実測し、美しい透明水彩のスケッチで描いてきた遠藤慧。その実測対象は、ケーキやパフェから、建物・都市スケールまで多彩。日常生活や旅先で利用するもの、スケール感の異なるものが、実測スケッチという手法で等価に表現されることで、新鮮なものの見方に気づかせてくれる。新作スケッチを含む全24点をポストカードにした特選作品集。
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