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Collaboration

蕪木:「日本人らしいコーヒーとチョコレート」にものづくりの精神で向き合う

2018.12.18

--蕪木さんはご自身のお名前を冠したお店をオープンされたのが2016年11月。開業間もない頃からコーヒー愛好家の間では話題になっていました。

(「蕪木」店主 蕪木祐介さん )都心の喧騒からちょっと逃げ込めるような、自分が必要だと感じた場所を作ったので、その思いが届くべき人に届いているのかなという感じです。入れる人数も少ないですし、駅からもそう近くないのに来てもらえるのはすごくありがたいですね。
僕自身、学生時代に喫茶店に入り浸る生活をしていました。落ち込んだ時、喫茶店に行って感情をそしゃくする時間は自分にとって大切な時間でした。自分もそういう形で人の役に立てればいいなとずっと思ってました。

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--最初からお店を運営されていたのではなく、当初は菓子メーカーで働く傍ら、個人でコーヒーの焙煎と卸しを手がけられていたそうですね。

学生時代にコーヒーやカカオに興味を持って勉強していたのがきっかけですかね。どちらも産地のテロワール(気候、地理、土壌などの生育環境)が重要で、豆を焙煎してから作られ、作り手の技術を加えて、最後かたちになる。知れば知るほど深い世界だなと思いました。当時コーヒー屋でアルバイトをしていたのでそのまま独立しようと思っていたのですが、コーヒーの知識をチョコレートにも活かしていきたいと思い卒業後は菓子メーカーに就職しました。
会社員時代はレシピの開発や、原料であるカカオ豆の研究、セミナー講師など、主にチョコレートの味に関わる研究開発の仕事をしていました。仕事と並行して、平日夜と休日はコーヒー豆を焙煎して個人的にレストラン、喫茶店、カフェに卸す生活をしていました。そのような生活を20代の大半過ごして、メーカーを退職してから今に至ります。「コーヒーとチョコレート」の二つをご提案するというのは変わらないですね。

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--会社員と並行して個人的に活動していたんですね。そこまでする原動力というのはなんだったのでしょうか。

コーヒーとチョコレートは、どちらも生きるために必須ではないと思うんです。ただ、生活をより豊かに送るには嗜好品は必要あると思って。コーヒーは精神を落ち着かせてくれる、反対にチョコレートはどちらかというとプラスに、朗らかにさせてくれるというか。そういったところに魅力を感じています。それらをツールとして良い時間を提案したいと思って続けてきました。

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--気持ちを落ち着かせる、気持ちをそしゃくできる場所と聞くと、この静かなお店の雰囲気は納得できますね。

そうですね。カウンターは作ったんですけど、樹齢100年は越えている栗の木の表面を焼きました。自分の中でやりたいことはイメージできていたので、コーヒーとチョコレートに対して空間を肉付けしていった感じです。人に任せなかったから自分らしい空間もできたのかなと。

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先ほど「逃げ込む」と言いましたけど、そういう時って必ずしも明るい気持ちではないと思うんです。暗い気持ちの時、特にお洒落をしてない時でも来てもらいたい。近所の方が豆を買いに来てくださることも多いのですが、ちょっと息をつきに美味しいコーヒーを愉しんで、なんかぼんやりとして帰っていく、という方も多いですね。
日本人にとって、茶室のようなほの暗いところで落ち着く、という感覚はあると思っていて。僕はものづくりにおいて「日本人らしさ」というのを大事にしています。世界で一番美味しいコーヒー、チョコレートを作りたいとは思っていなくて、日本人に合うものを作りたいですね。

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--「日本人らしさ」のある蕪木のコーヒーとチョコレートというのは、具体的にどういったものでしょうか。

いわゆる「丸みのある味わい」。尖りやインパクトのある味よりも、角が取れてなめらかな、優しい味わいですかね。そこに対してこだわりと思い入れを持ってしっかりと仕事をしなきゃという思いがあります。コーヒーもそうですね。今は多種多様なコーヒーがありますが、その中でもいろんな味の層が組み合わさり滋味深さが出るよう心がけています。

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--蕪木さんはお店も住まいも鳥越だそうですが、この地域に決めた理由はなんですか?数年住んでみた感じることはありますか?

最初は都心でも場所を探していたのですが、次第に自分がしっかりとものづくりと向き合える場所を探したいと思うようになって。この地域はもともと職人さんが多いエリアで、やっぱり商売に対してみなさんの理解があります。それこそ僕が店の改修をしてる時も近所のおばちゃんがお茶持って来てくれたり。懐が深いと言いますか。
コーヒーとチョコレートに対して、作る現場にい続けたい、という思いはずっとあります。この地域には思いがあって活動されている方が多いので、同じ方向を向いていなくても互いに尊敬の気持ちがありますし、刺激も受けます。そういうのはすごく気持ちの良い場所ですね。一人一人の方が素晴らしいと思っているので、自分も恥じぬ働き方をしたいなと。まずはカップ一杯のコーヒーとチョコレートがよいものであれば、あとは自分の中でベストを尽くそうと思ってやってます。

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Profile

プロフィール
Kabuki
蕪木
2016年11月オープン。珈琲豆の焙煎販売とチョコレート製造販売を行い、併設の喫茶室ではそれらを楽しむことができる。「日本人らしさ」を大切にした珈琲とチョコレートを求め、小さな看板の洗練されたお店には日々人が集まっている。
kabukiyusuke.com
※本記事の取材と撮影は、移転前の店舗にて行なっております。
2019年12月に以下住所に移転、喫茶営業を再開されています。
東京都台東区三筋1-12-12
ノーガホテル上野から徒歩16分、自転車で6分
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