今回はAkiba.TV株式会社代表取締役の吉岡有一郎さんへ、90年代から2000年代初期における秋葉原電気街について伺いました。
秋葉原とわたし
秋葉原に関わり始めたのが中学生の時で、今年で48歳になるので、もう35年ぐらい前になります。その頃の秋葉原はオタクの街というより、まず女性がほとんどいなくて男性2人組が多いような街でした。今みたいに食べるところもなく、観光地というよりは専門街。まさに「電気街」でしたね。本当に知る人ぞ知る、少しニッチな街でした。
転機になったのは1995年のWindows95発売ですね。24時ぴったりに全世界でマイクロソフトのOSが発売されるということで、秋葉原にも行列ができて、それでマスコミにも秋葉原が広く注目されるようになりました。当時秋葉原に来ている方は、みんなPCとかガジェットが好きな人たちばっかりで、そこにしか情報がないからお店の人と情報交換もしてましたね。来れば最新の情報もあるし、仲間もいる。お店の人とも仲良くなれるし、ちょっとした優越感もありました。
―街でいち早く情報を得て、それを知っている者同士と話をしたい。街自体がインターネットみたいな、そんな感じでしょうか。
そうかもしれないです。少しずつハブで繋がっていて、気になったらその隣のビルに行ってみる。あと僕がすごく不思議に感じたのは、秋葉原ってコミュニティが「垂直」なんですよ。ビルのテナントもそうですが、好きなジャンルごとにコミュニティが形成されていても、その横がないんですよ。
―例えば 2ちゃんねるとかの掲示板もそうですけど、そういうものっていわゆる街の作りと似た構造だったのかもしれないですね。
そうですね。あれも板(スレッド)ごとにジャンルが細分化されていて、お題をずっと語る。すごくアキバにマッチしていて、街がネットを具現化したような感じだったのかもしれません。

アニメ、映画、アイドル文化
『新世紀エヴァンゲリオン』のアニメ放送も1995年。当時僕は高校生ぐらいで、主人公が中学生。大学受験を意識したり、悩みを抱えたり、多感な時期じゃないですか。ちょうど主人公と似たような感覚で、すごくシンクロして。劇場版上映の時、映画館に 3日前から前乗りして並んでいたので、映画館の人も見かねて上映前夜に館内に入れてくれたんですよ。(笑)
2000年代に入ると秋葉原も変わっていきました。映画『電車男』が2005年に上映されて、そのあとAKB48が登場して、アイドル文化やメディアに発信力も加わってきました。お店の客層も女性が増えてきて、街のイメージも変わりました。ただ、新陳代謝が激しいのは昔からで。常に情報をアップデートしていく、というところはあります。僕は秋葉原のツアー企画をやっていますが、正直この街わかりにくいんですよね。(笑)
今はだいぶわかりやすくなったけど、例えばメイドカフェとか雑居ビルの上にあるじゃないですか。「少し踏み込まないと見つからない」から面白い、この街を歩くこと自体がドラクエのように宝探しをしている感覚なんです。

闇市から即売会、歴史は巡る
駅前広場のUDXがある場所は、もともと青果市場だったんですよね。その後はバスケットコートがあったり、「AKIBAX」という展示会をやっていたり。最新家電やデジカメが集まっていて、見るだけですごくワクワクして。明るい闇市みたいな感じなんですよ。
同人誌即売会とかもそうなんですけど、好きなもの、作ったものをみんなで持ち寄って見せあえる、集まるような場所だと思います。コロナ禍以降では、海外のお客様がゼロになっちゃって、街自体も厳しかったし、我々もツアーができない状態でした。でもコロナが明けると、今度は急に海外のお客様がすごく来るようになりました。その流れもあって、飲食店はかなり増えましたし、観光地化も進んでいると思うんですよ。面白さの反面、僕は危惧もしていて。秋葉原はものづくりの街なんですよ。まだ評価されていない新しいものに飛びつく人がいて、アーリーアダプターがいて、コミュニティができる。ユーザーが意見を言い、なんならメーカーがそれを聞いてまた新しいものを生み出していく。そういう街の文化はずっとあると思うんです。だから「見たことないワクワク」っていうのが大切で。チェーン店も増えて、アキバじゃなくてもいいじゃない、ってならないように意識して活動していますね。
―街のキュレーター的な立ち位置ですよね。
そうなれたらいいなと思って、弊社ではインバウンド向けの秋葉原ツアーを開催しています。観光客の中には、電気街を知らないお客様もたくさんいらっしゃるから、なんでこの街ができたのかとか、ネットショッピングよりも実際触って買う方が面白いでしょとか、リアルな体験を伝えたいんです。うちに置いてあるロボットも全部触れるようにしてて、もう壊してもいいから遊んでみて、くらいの感じです。(笑)
昔のこの街にはそういうドキドキワクワクがあったんですよね。お店の人と話していると、店の奥から色々持ってきて見せてくれる。そういうお店をもっと増やしたいし、それがアキバらしいなと思います。

コミュニケーションの街アキバ
うちは VTuberさんと秋葉原を歩くツアー、「アキバVちゅあ~」もやっているんですが、参加される方って普段はスマホ越しに見てるんですけど、「本人と話したい」ってうちに来てくれるんです。でも面白いのが、お客様同士は初対面だけどハンドルネームだけは知ってる事が多いんですね。ツアーが終わったら、参加者だけでオフ会してるわけですよ。なんかすごくいいなあと思って。極端な話、主役のVTuberより、推してる人同士のコミュニケーションがすごくアキバっぽいなと思って。
あとはこれ、JOYカートっていう乗り物なんですけど、ベースは車椅子なんです。年齢も身体的な条件も関係なく誰でも乗れる。車椅子ってどうしても特別なものとして見られがちですが、これだと手軽に持っていけるし、これに乗ってると「かっこいい」とか「楽しそう」になる。マイナスじゃなくて、プラスな体験に変えられるんじゃないかなと思っています。

―いろんな事象がある中でも面白く転換できるようなことの発想や心持ちがありますか?
あると思います。以前公開番組をやっていてスタジオを持っていたんですけど、ずっと番組を見てくれていた引きこもりのお客様がいたんです。ある日、意を決して横浜から秋葉原まで来てくれて。話すのも苦手みたいだったけど、さっき話してたオフ会みたいに、番組終わった後に他のお客様と話していて。今日楽しかったですって言ってくれた時はすごい嬉しかったですね。なんかそういうのっていいじゃないですか。やっぱりちょっとした壁を破れる、秋葉原だったら来れるのって。僕も渋谷へ行くとドキドキしますし。でも秋葉原には安心感がある。オタクでもいいし、こんな僕でも許される。その包容力がこの街にはあると思っています。
ロボットが街を拓く?
―これからこの街でやっていきたいこと、取り組みたいことなどあれば教えてください。
やっぱりロボットですね。昔はロボット屋さんって結構あったんです。でも結構閉店しちゃって。ただ、ロボット技術はすごい勢いで進化しています。昔は二足歩行するのもすごい大変だったのに、今はうちの店でもできるようになってきた。まだ脚がない状態ですが、今ここにあるロボットも仲間が開発していて、今後二足歩行できるようになり、さらに変形して実際の公道を走れる車にもなる予定です。まさに本当の意味で「リアル」トランスフォーマーを実現しちゃうようなクリエイティブなことを、ここから発信して、みんなと一緒に作っていきます。完成した際はぜひノーガホテルまで車に変形して行きますね。(笑)

新陳代謝をしながらも大切なものは人と人の関わり。吉岡さん達のように好奇心に目を輝かせる人がいる限り、この街は未来を見つめている。